モデル化までの過程−現代のモデラーが価値を創造し、ビジネスにおける有効な意思決定を推進する方法 第1回

2018年10月14日

 

本記事は、American Academy of Actuariesの雑誌Contingenciesに記載されている記事「Model Behavior—How a modern modeler can add value and drive effective business decisions」の翻訳である。この記事は4回に分けての配信予定であり、その第1回である今回は、「Exhaust Available Resources」の1節について配信する。

モデル化までの過程−現代のモデラーが価値を創造し、ビジネスにおける有効な意思決定を推進する方法

Olyvia Leahy著

保険数理のモデルは非常に科学的であるという性質を持つ一方、モデルを修正・改良したりする過程では多少の「芸術性」が必要である。その過程で、優れたアクチュアリアルモデラー(モデラー:数理モデルを対象に合わせて改良していく業務を担当する人)が心血注いで価値を付加し、モデルが「業務プロセスにおける形式的なもの」から「非常に価値のある意思決定のための道具」となる。

 いくつかの新しい基準と規則が最近導入されたため、企業は、国際財務報告基準第17号(IFRS17)や、原則主義ベースの責任準備金評価(Principle-Based Reserving, PBR)、生命保険資本十分性テスト(Life Insurance Capital Adequacy Test, LICAT)、そして、米国の税制度改革についての理解のためだけではなく、これらの変化を従来の複雑なモデルにどのように当てはめるかについて正確に対処するために、現在懸命な努力を行っている。

 これらの最新の規則はさておき、絶えず変化する規則の中で企業は、最も機敏な企業が優位に立てる競争状況でうまく立ち回らなければならない。したがって、現在のモデルをより正確にすることには利点がある。また、もう一つ利点があり、それは、企業がこれまでモデル化してこなかったことをモデル化することである。最終的にはより信頼性の高いモデルを使うことによって、ビジネスにおける意思決定を促進し、より確実に企業が将来の計画を立てるための適切な方法をとることができる。

 この記事では、現在のモデル化の過程を効率的なものにするために、「資源を有効活用すること」、「敬遠されがちなブラックボックス化している保険数理ソフトを取り入れること」、「強固なモデルを設計すること」、「モデルの限界を認識すること」、そして、―これが最も重要なことであるが−「粘り強く頑張ること」、の5つについて細かく見ていく。

利用可能な資源を有効活用せよ

 アクチュアリアルモデラーのチームは多種多様な経験をしていて、異なるバックグラウンドを持つ人間からなる。しかし、何十年も学んで、それが身についているモデラーでさえ、一人で業務を遂行することは浅はかなことである。モデル製作のプロジェクトに取り組む際に活用すべき資源というのがいくつかある。それは。人・文書・技術の3つである。

まずモデル化の「ソリューション」が「ソリューション」であると見なされるためには、モデル化における問題点を解決しなければならない(問題点は4つ以上作らないことが望ましい)。これは、他の何よりもまず、問題が明確に定義される必要があることを意味している。モデル化の「ソリューション」が本当に「ソリューション」であると確実に言えるようにするために、その問題について自分と異なる視点を持っている可能性のある他者に聞いてみるのはいいアイデアである。他の専門家がモデラーの盲点だったことに気づくことができることがある。後でデバッグをしたり、最適でない解を作ったりするために浪費したであろう多くの時間を、これにより節約できる。

 さらに、他のモデラーに聞いてみることは過去の「ソリューション」を活用するための素晴らしい方法である。モデル化で現れる問題点は、ほとんどの場合新しくないパターンの問題点が生じる。それゆえ、過去の「ソリューション」を活用することによりモデラーは、考えているモデルの問題点と過去のモデルの問題点との共通点を見出すことが出来る。これは他者の知識やノウハウを活用することでとても容易に達成される。

 特に大企業では、おそらくアクチュアリーやモデラーは頻繁に役割や部署を異動するので、他の人が過去のプロジェクトで直に感じた経験を得ることが困難になっている。このため、過去のモデル化の問題点とその「ソリューション」の、徹底的な文章化が極めて重要である。正確な文章調査により、モデラーはもう会うことが難しい人の知識を利用することが可能になる。

 一度問題が明確に定義されたならば、利用可能なすべての技術を考慮した上で「ソリューション」を開発するべきである。これを行う良い方法は、何が理想的な「ソリューション」と考えられるかを特定することから始めることである。そして、これは(モデルではなく)「現実世界」で何が起きているかを考えることである。「現実世界」で起きていることを、モデルは正確に表現することが出来ないという食い違いがあるので、そのことを理解することによって、モデラーはモデルの改良をどういう基準で、どこから始めたらよいかということを知ることが出来る。ここから、モデラーは会社の基準に合致したまま、理想的な「ソリューション」からほとんど妥協しなくてよいテクノロジーと道具を考えることができる。

次回は、「Model Behavior—How a modern modeler can add value and drive effective business decisions」の第2回を配信予定である。

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