5Gと保険
2021年10月8日
本記事は、米国アクチュアリー学会(AAA; American Academy of Actuaries)の機関紙Contingenciesに掲載されている、「5G and Insurance—A Match for the Ages?」という記事の翻訳である。この記事は3回に分けての配信予定であり、今回はその第1回である。
近年、最新世代のワイヤレスネットワーク技術である5Gが世界中で展開され始めている。5Gは4Gと比較して速さ、遅延、接続密度など多くの面で優れた性能を発揮し、農業や金融、物流など多くの分野での活躍が期待されている。
保険の世界においても、5Gと4IRの技術が合流することで、影響を受けると考えられている。本記事では、5G技術の範囲、保険を含む業界への影響、そして何を期待されているかについて説明する。以下、「」内は引用。
「スリヴァッサン・カラナイ・マルガン 著
ワイヤレスネットワーク技術の第1世代(1G)によって、アナログ音声通話とともに1980年代に携帯電話の普及が始まった。それから数十年の間に、第2世代(2G)と第3世代(3G)が導入され、画像や音声などの送受信を可能とするマルチメディアメッセージングおよびモバイルインターネットの時代の時代が到来した。その後に到来し、最近の主流となっている第4世代(4G)は、人々の携帯電話の使い方を変化させた。それは、高精細なストリーミングとデジタル接続の新しい時代を切り開くこととなった。これらの技術は、産業と消費者の間でデータトラフィックの増加を推進させる事で、多方面のデータ駆動型経済を徐々に先導してきた。時代を経て、人々のコミュニケーション、つながり、取引、消費の方法は劇的に変化してきたのである。
第5世代(5G)は、近年世界中で展開されている最新世代だ。それは、超高速ブロードバンド、大容量接続を可能とする高キャパシティ、超低遅延を実現することが可能となる。5Gは、接続に関する理論的枠組みに革命を起こし、生産性、効率性、有用性、経験の輪郭を再描画する事が期待されている。この記事では、5G技術の範囲、保険を含む業界への影響、そして何を期待されているかについて説明をしていく。
The promise of 5G 5Gの約束
ピーク時には、5Gは1秒当たり10ギガバイトの速度と1ミリ秒未満の遅延、1平方キロメートル当たり100万台のデバイスをつなぐ接続密度を可能とする。このような驚異的なパフォーマンスにより、5Gは4Gと比べて圧倒的に優れた性能を発生できることが期待されている。(表1参照)
表1:4Gと5Gの間でのピークにおける比較
このように優れた性能が発揮できるのは、5Gが作動する方法が根本的に以前のネットワーク世代と異なるためである。5Gは、より周波数の高い高周波電波を使用するが、通信サービスプロバイダー(CSP)は、より小さな地理的区画から成る密度の濃いインフラを構築するために、膨大な先行投資を行う必要がある。5Gの非常にニッチな特徴は、『ネットワーク・スライシング』である。これはユーザーの特定の需要に合わせ、調整・保証されたサービスを提供するネットワークの論理的な区分を作る機能である。
4IRと5Gの合流
デジタル世界と生物学ならびに物理学の世界の合併を特徴とする第4次産業革命(4IR)は、、進化の初期段階にある。AM技術や人口知能(AI)、自立走行車、ビッグデータ、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、拡張現実(XR)、IoTなどのいくつかの技術の収斂進化によって立証されているように、これらの進化は私たちの生き方、仕事、旅行、購入、消費、購入の方法を劇的に変化させている。これらの新しいテクノロジーの基本的なパラダイムは、データの生成、保存、分析、消費、処理の方法を再定義する接続性である。接続されるデバイスやソリューションの数が急増すると、データがその基盤となる 「すべてが接続された」 環境が実現することとなる。データトラフィックの驚異的な急増は、より高度なネットワークを必要とするが、このニーズに対応するため、5 Gは4 IRへの移行を加速する潤滑剤としての役割を果たすと期待されている。
5Gの力が完全に発揮された時、発信者と受信者の間の通信に関連する時間と距離の制約は非常に小さいものとなるであろう。またこれにより、ハードウェアとソフトウェアの分野に新たな革命がもたらされる可能性がある。これは、コア処理機能がネットワークのエッジに移行するにつれて、ユーザー側のソリューションがよりシンプルになる可能性があるためだ。5 Gは、単なるアクセス技術ではなく、幅広い製品や個別のアプリケーションを処理する能力、一定期間にわたって自らを向上させる能力、他の4 IR技術の改善やイノベーションを引き起こす能力を備えており、トランスフォーミング汎用技術 (GPT) であると謳われている。
5Gの初期段階では、ハイパーコネクティビティ、改善されたデータ取り込み、より高い接続密度、より迅速なフィードバックの利点を活用し、マルチメディアコンテンツとデジタルサービスにアクセスするためのより良い顧客体験を提供することに焦点が当てられると予想される。初期のユースケースの大半は、4 IRと4 Gで開始された実験から派生したもので、現在は5 Gで再活性化されている。
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