「インデックス型変額年金 第3回」

2018年8月21日

アクチュアリー業務を行っていく上でモデルの使用は、ほぼあらゆる課題の計数的な解決に必須になっています。また、諸外国の内部モデルの規定などがソルベンシー要件の軽減につかわれるようなこともあり、モデリングは法令上も一層に重要なトピックになっている。当社では、このような観点から海外のモデリングに関する文献を翻訳し読者の皆様に引用して提供します。以下、「」内は引用。

本記事は、アメリカアクチュアリー会のニュースレター3月号に記載されている記事「Indexed Variable Annuities: The Next Product Frontier for the U.S. Annuity Market」の翻訳である。この記事は3回に分けての配信予定であり、その最終回である今回は、「US STATUTORY ACCOUNTING」、「US GAAP ACCOUNTING」、「IMPLICATIONS」の3節について配信する。

「インデックス型変額年金(IVA): 米国年金市場の次なる商品フロンティア

著Simpa Baiye, Robert Humphreys, David Knipe

米国法定会計

 法定会計原則(SAP)の下でのIVAの責任準備金の算出は、適切な算出方法の枠組みの中で商品を分類することに関係してくる。IVAの商品設計とその付随的な特徴は、ニューヨークに拠点を置いていない保険会社のためのアクチュアリアルガイドライン43(AG43)に従った責任準備金等の算出方法の影響を受ける可能性がある。しかしながら、AG43はIVAに関する責任準備金等の明確な算出方法を指示してくれるわけではない。したがって理想的には、責任準備金要件を満たす明確な方法は、年金の最低評価基準と、実利的な資産負債総合管理(ALM)との対立的な影響を両方考慮したものになるだろう。ニューヨークに拠点を置いている保険会社によって発行されたIVAは、規制151と128に沿うように算出された責任準備金を積み立てるだろう。

複数のアカウント(separate accounts)にあるIVAに充当される投資の算出方法は、規制機関が特別な許可を出さない限りは市場価値によるものである。ガイドラインにより算出された責任準備金が、資産と同じ市場感応度を持たない場合、バランスシートが変動したり重複が起こったりするだろう。

米国会計基準(USGAAP)

USGAAPの下でのIVAの責任準備金の算出は、クレジット設計(crediting design)における組み込みデリバティブの性質を考慮する必要がある。結果として、組み込みデリバティブのガイダンスであるASC815-15が適用され、またこれは親契約と商品の組み込みデリバティブの部分の識別を含む。親契約は債券で構成され、主に償却費用で評価される。一方、組み込みデリバティブは収入を通じて公正価値で評価される。別の方法は、金融商品に関するASC825に基づいた公正価値オプションを選ぶことで公正価値原則を用いる、契約全体(親契約と組み込みデリバティブ両方)の評価を含んでいる。

クレジットオプションをヘッジするのに用いられるデリバティブは、損益計算書を通して公正価値で評価される。IVA契約に充当される債券投資は一般的に売却可能(AFS)か売買目的と分類されるか、または公正価値オプションが選ばれるかもしれない。確定利付証券におけるAFSの分類は、その他の包括利益に含まれる未実現(unrealized)の損益記録を含み、償却費用で実際に算出された親契約との差異を最小化するだろう。一方、売買目的有価証券を分類すること、もしくはデリバティブという確定利付証券を公正価値で評価できるように公正価値オプションを選択することは、ASC825の下で年金契約全体を公正に算出した評価と一致するだろう。証券取引の分類、もしくはそれに関連する確定利付証券のための公正価値オプションの選出は、利潤に関するあらゆる実現損益(realized gains and losses)と未実現損益(unrealized gains and losses)をもたらすだろう。

含意

 インデックス型変額年金(IVA)の業界売上高は、より多くの保険会社が競合商品を販売するにつれ今後も成長し続けるだろう。IVAの設計とリスク管理の手法は、消費者の要求と保険会社のリスク選好度とのバランスを取る必要がある。

債券投資とデリバティブの取引から生じる利鞘は、保険会社の大きな利益収入源になる。したがって、保険会社にとっての最適な投資とデリバティブの利用戦略は、商品設計とリスク選好度を反映したものとなる必要があり、また詳細な分析も求められる。

決算と企業価値評価の算出方法の入念な分析は、実利的なリスク管理手法をはっきりと見通すことができたときに可能となる。この分析は、資産とIVAがもたらす負債に対するUSGAAPとSAPの会計上の評価の差異を最小化することにつながる。

結論として、IVAは保険会社にとって、増加しつつある退職前の労働者(55~64歳層)のリスク許容度と合致する課税繰延貯蓄(tax-deferred savings)の機会を提供する、次世代の潜在的にかなり大きなビジネスチャンスを表している。我々はこの分野における商品のイノベーションが、より新しくより複雑なクレジット設計を導入することで続いていくと予想する。商品の透明性は変わらず最重要であり続け、保険会社が法的リスクとコンプライアンスリスクの管理をすることがこれらの商品の拡散につながる。」

次回は、「Bull’s-eye!: Using targeted products and market segmentation in life insurance to benefit both insurer and customer」を配信予定である。

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