「インデックス型変額年金 第1回」

2018年8月4日

アクチュアリー業務を行っていく上でモデルの使用は、ほぼあらゆる課題の計数的な解決に必須になっています。また、諸外国の内部モデルの規定などがソルベンシー要件の軽減につかわれるようなこともあり、モデリングは法令上も一層に重要なトピックになっている。当社では、このような観点から海外のモデリングに関する文献を翻訳し読者の皆様に引用して提供します。以下、「」内は引用。

本記事は、アメリカアクチュアリー会のニュースレター3月号に記載されている記事「Indexed Variable Annuities: The Next Product Frontier for the U.S. Annuity Market」(Issue112, March https://www.soa.org/sections/financial-reporting/financial-reporting-newsletter/)の翻訳である。この記事は3回に分けての配信予定であり、その第1回である今回は、「WHAT ARE INDEXED VARIABLE ANNUITIES?」、「IVA DESIGN」、「PRODUCT ENGINEERING」の3節について配信する。図に関しては元の記事を参照されたい。

「インデックス型変額年金: 米国年金市場の次なる商品フロンティア

著Simpa Baiye, Robert Humphreys, David Knipe

 「構造型(structured)」または「緩衝型(buffer)」年金としても知られているインデックス型変額年金(IVA)は、保険会社と投資家の両方の関心を集めている比較的新しい商品である。IVAには保険会社や顧客にとって魅力的な特色がある一方、複雑な財務報告とコンプライアンスの考慮が必要となる。実際の発行人、潜在的な発行人および他の利害関係者がこれらの商品の性質をよりよく理解できるように、この記事では以下のことを議論する。

・商品設計

・商品工学(product engineering)

・発行

・資産負債総合管理

・規制およびGAAPの会計フレームワークに関する会計上の考慮事項

インデックス型変額年金とは何か?

 インデックス型変額年金(IVAs)(「構造型(structured)」または「緩衝型(buffer)」年金としても知られる)は、比較的新しい据置年金商品である。IVAは本質的に、市場パフォーマンスの低下によってある程度リスクが生じる可能性がある一方で株価指数に連動した累積的な利息をもたらす据置年金である。IVAは、株価指数に連動した限定的な利益をもたらし、また市場パフォーマンスの低下によるリスクを負うことがない定額指数連動型年金(fixed indexed annuities, FIAs)や、市場パフォーマンスの影響をもろに受ける変額年金とは異なる。図1(15ページ)はこの特徴をIVAやそれに関連した他の種類の年金と株式市場の収益率に対応した期間収益率(または予定利率)を示すことで説明している。

 IVAの売上高は、2012年に米国年金市場に導入されて以来着実に増加している。図2(15ページ)の産業売上高(industry sales)は、市場がIVAの拡大を受容していることを示している。事例調査により、この売上高の伸びは、定額年金や定額指数連動型年金よりも魅力的な累積運用益を求める退職者及び退職前の労働者により促進されたことが示されている。従って、近い将来IVAは保険会社の商品ラインナップをより充実させることになるだろう。

IVAの設計

 IVAは、定期的な利息の付与(正または負)が公式を介して参照株価指数の実績と連動している更新式定期保険のクレジッティングアカウント(crediting accounts)により構成されている。この公式は発生し得る正のパフォーマンスに限度を設定し、また負のパフォーマンスが契約にどの程度反映されるかについて限度を定義する。図3(15ページ)は、(クレジット戦略期間の長さが1年であると仮定して)2017年時点で普及している3つの異なる設計のIVAがとり得る予定利率を示しています。IVA1の予定利率は、予め設定された上限まで市場の動きと直接連動し、市場リターンが定められた水準以下になると負の値をとる。IVA2の予定利率は、予め設定された上限まで市場リターンと直接連動し、市場リターンがマイナスになると負の値をとり、市場リターンが定義された水準を下回ると横ばいになる。

IVA3の予定利率は市場リターンがゼロ以上である限り一定であり、市場リターンが定められた水準以下になると負の値をとる。

 期限前償還は一般的に、インデックスクレジットの暫定価値のための、また潜在的には商品の準備金に充当される債券の市場価値のための頭金へのいくらかの上方調整または下方調整を含む。

 伝統的な変額年金の下位勘定(subaccounts)と固定金利勘定は、多くの場合IVAの貸方オプション(crediting options)と共にもたらされる。IVAは保証された死亡給付、または、通常は適用される解約控除金の放棄、といった限定的な保険保証を特徴とする。

商品工学(Product Engineering)

 IVAは、財務的には株価指数オプションの補完的ポジションでできている債券部分とデリバティブ部分から成る。図3に示すIVA戦略1の場合、IVAは事実上ゼロクーポン債券、ヨーロピアンコールオプションの買い、及びヨーロピアンプットオプションの同タイミングでの売りで構成されている。コールオプションは指数が上昇すれば利益をもたらし、他方プットオプションは指数が下降すると債券への投資を危険に晒す。図4では、一年間に起こり得る様々な指数のシナリオの下でのこのIVAのパフォーマンスについて示されている。

 図4(16ページ)の分析は、保険会社がどのようにIVAのリスクを管理できるかを明らかにする。また、保険契約者が暫定的な償還価値を計算するのに役立つ。保険会社の利幅は、明白な商品の手数料と、預託保険料(premium deposits)による投資のスプレッド、そして、(もしあれば)指数が低下するとリスクを負うデリバティブの売り上げからもたらされる収益が、市場が上向きになると利益をもたらすオプションの購入金額を上回るときのそれらの差額により構成されている。」

次回は、同記事「Indexed Variable Annuities: The Next Product Frontier for the U.S. Annuity Market」(Issue112, March https://www.soa.org/sections/financial-reporting/financial-reporting-newsletter/)の第2回を配信予定である。

注. 本記事の日本語著作権は株式会社ヨシダ・アンド・カンパニーに帰属に帰属しており直接のメール会員、当社の教育講座受講生以外の外部へのコピーまたは電子媒体での流出を禁じます。当法人は翻訳の正確性について一切の責任を負いません。

この記事を最後まで読まれたい方下記よりメール会員登録をお願いします。